


「同じお店でセラピストを変えるのって、あり?」
——女性用風俗(通称:女風)ユーザーの間でひそかに議論される「同店回遊」というテーマ。
自由に選べる楽しさの裏にある、セラピストの本音・店舗の経営戦略・そして自分の心の変化……。
夜のカフェで、東雲いろはと朝霧すず子が静かに切り込む“選ぶ自由と、選ばれる痛み”のリアルトーク。
朝霧すず子すず子:いろはさん、こんばんは。最近、「同店回遊」についてちょっと考えることがあって…。女風で同じお店の中で、セラピストを変えて指名するって、アリなんでしょうか?それとも、ちょっとルール違反というか、気遣いが足りないんでしょうか。



いろは:あー、またそれか。はいはい、じゃあ整理しようか。結論から言うと、「アリ」。でもね、何も考えずにやると誰かを傷つけるから、「筋」を通す必要がある。



すず子:筋、ですか?



いろは:そう。自由ってね、「なんでもやっていい」ってことじゃないの。自分の自由が他人の感情と衝突する場面でこそ、その自由を“どう行使するか”が問われるわけ。女風って、そもそも感情と密接に関わるサービスでしょ?



すず子:たしかに。実際、セラピストさんと距離が近くなるから、ただの消費行動以上のものを感じることもあります。



いろは:そう、だからこそ感情労働なんだよ。で、同店回遊っていうのは、まさにその感情の境界線を歩く行為なの。制度としては禁止じゃないけど、人としての配慮が求められるゾーン。つまり、“合理的にはOK、でも関係性によっては繊細”。



すず子:なるほど…。



いろは:ここ、私的に言えば、
「観察:同店内で複数セラピストを指名する行動」
「感情:セラピストが不安や寂しさを感じる」
「ニーズ:顧客は癒しの最適解を求め、セラピストは継続的な信頼と尊重を求めてる」
「リクエスト:どちらのニーズも踏まえて、選び方や伝え方に思いやりを持つこと」。



すず子:それって、相手を責めずに自分と相手の感情やニーズに目を向けるコミュニケーションですよね。



いろは:そう。でも、ここで別の視点も忘れたくない。つまり「自分が何を求めるか」を冷静に見て、それを満たす行動を選ぶ。その上で他人の自由や尊厳も尊重する。利己と利他は、対立しなくていいの。



すず子:回遊すること自体が悪いんじゃなくて、その動機と態度が問われるんですね。



いろは:うん。たとえば、今日優しく抱きしめてくれる人が欲しい日もあれば、ただ話を聴いてほしい日もある。女風って、その日の自分を受け入れるための“自己決定の場”なんだよね。



すず子:じゃあ、同店回遊っていうのは、ある意味「自己理解の旅」でもある?



いろは:その通り。単に新しい人に会いたいから、だけじゃない。前の人と比べて「私はこうされるのが好きなんだな」とか「こっちは少し違ったな」って、自分の内側を整理していく行為。それって悪いことじゃない。むしろ、自分を大切にするための手段。



すず子:でも、それを知られたらセラピストさんはショックを受けるかも…。



いろは:受けるよ、当然。現場でも実際、あるあるだもん。「この前〇〇さんのとこ行ってたらしいね」ってボソッと伝わること、あるからね。



すず子:怖い……。



いろは:でもね、そこも冷静に考えよ。女風業界の裏話として言えば、「同店回遊」は実は店舗としては歓迎されがち。売上が落ち込むより、店内で回ってもらった方が経営的には助かるから。新人の経験値にもなるし、稼働率も上がる。



すず子:じゃあ、セラピストとお店で意見がズレてることもあるんですね。



いろは:あるよ。しかも、回遊の恩恵を受けてるセラピストと、そうじゃないセラピストで温度差がすごい。回遊してくれたおかげで指名が入った子は「ありがたい」って思うし、逆に常連を回遊されてモヤった子は「裏切られた気分」になる。



すず子:たしかに、数字がすべてのようでいて、感情が絡むのがこの業界。



いろは:まさにそのバランスが肝なんだよね。ユーザーも「選ぶ自由」はある。でもその選択は、見えない誰かのメンタルに作用してるってことも、同時に忘れちゃいけない。



すず子:そのへんって、一般の人は知らないんじゃないでしょうか?



いろは:うん、あんまり表には出てこない。でも、業界インサイトとして言えば「セラピストの離職理由ランキング」って、意外と第1位が“人間関係”なんだよ?お客じゃなくて、店内のね。派閥・嫉妬・回遊ストレス——そういうのが根詰まりして辞める子が多い。



すず子:知らなかった……。



いろは:だからね、何気なく指名してるその行為が、セラピストの定着率や店の経営にまで影響してるの。これはもはや「個人の自由」じゃ済まされない。逆に言えば、丁寧に回遊できるユーザーは、お店からもセラピストからも信用されやすい。



すず子:なるほど…でも、「回遊って節操ない」って思う人もいませんか?



いろは:うん、そういう反対意見もある。具体的には——
「回遊する人は本命を作れない遊び人っぽい」
「セラピストを比べるなんて失礼」
「人間関係が希薄になって業界全体の質が落ちる」
でもね、それぞれ反論はできる。
1に対しては、「遊び」って軽視する視点自体が偏見。むしろ、浮気じゃなくて“検証と選択の過程”なんだよ。
2に対しては、そもそも比較されることを想定した職業構造。飲食だって美容室だって、お店ごと、担当者ごとに選ばれて当たり前でしょ?
3についても、質を落とすのは回遊じゃなくて、“関係を軽く扱う人間”の方。つまり、やり方の問題。



すず子:たしかに。「どう選ぶか」で人間性が出る感じがします。



いろは:そう。だから、選ぶ自由を使うなら、自分のスタンスと誠実さは持っておきたい。それが、自分に対しても相手に対しても「ちゃんと向き合う」ってことだから。



すず子:最後に、いろはさんなりのまとめってありますか?



いろは:「自分を大事にしたいなら、相手も雑に扱うな」。それだけ。自由は、雑にしていい免罪符じゃないからね。だからこそ、選びたいなら選べばいい。ただ、その行為にちゃんと責任持って。——そういうちょっとした“思いやり”が、女風という場所をもっと心地よくすると思うよ。

