女性用風俗を利用したとき、セラピストが指をペロッと舐めてから手マンを始めようとした…。
あるいは、彼氏とのムードが高まったとき、手軽だからと自分の唾液を潤滑剤代わりにしてしまった…。
こうした経験に、心当たりがある方も少なくないのではないでしょうか?
しかし、一瞬立ち止まって考えてみてください。
「その行為、本当に安全なのでしょうか?」
この記事では、そんなあなたの素朴な疑問と潜在的な不安に、複数の科学論文という「確かなエビデンス」を基に、真っ向からお答えします。
- 「唾液をローション代わりに使うと、具体的にどんなリスクがあるのか?」
- 「細菌性膣炎(BV)になりやすくなるって本当?」
- 「じゃあ、一体何を使えばいいの?」
この記事を読み終える頃には、これらの疑問はすべて解消され、あなた自身と大切なパートナーを予期せぬ健康リスクから守るための、確かで実践的な知識が身についているはずです。
結論:唾液を潤滑剤に使うのは「科学的に見てアウト」です
いきなり結論から申し上げます。
唾液(唾ローション)を性的な潤滑剤として使用することは、科学的根拠に基づき、強く推奨されません。
その理由は、一言で言えば「百害あって一利なし」だからです。
手軽さというメリットをはるかに上回る、深刻な健康リスクが潜んでいます。
唾液を潤滑剤に使うべきではない「3つの深刻なリスク」
なぜ、唾液を使ってはいけないのか。
その理由は大きく分けて3つあります。
これは、2021年に発表された論文『3 Reasons Not To Use Saliva As Lubricant』でも指摘されている、専門家の間では常識とも言える知見です。
リスク1:ヘルペス、クラミジア…性感染症(STI)を媒介する
唾液は、決して無菌ではありません。
それどころか、様々なウイルスや細菌の温床です。
もし、口の中にヘルペスウイルスや、咽頭クラミジア、咽頭淋病などの病原体が存在していた場合、唾液を介して性器に感染を広げてしまうリスクがあります。
特に恐ろしいのは、口の中に自覚症状がなくても、ウイルスや細菌を排出しているケースがあることです。
自分やパートナーが気づかないうちに、性感染症(STI)をうつし、うつされる可能性があるのです。
リスク2:膣内の菌バランスが崩壊!細菌性膣炎(BV)やカンジダ症の原因に
女性の膣内は、ラクトバチルス菌という「善玉菌」によって酸性に保たれ、外部からの雑菌の侵入を防ぐ、非常にデリケートで精巧なエコシステム(生態系)になっています。
しかし、唾液には食べ物を分解するための消化酵素や、1mlあたり数億個とも言われる多種多様な口腔内細菌が含まれています。
これらが膣内に侵入すると、膣内の繊細な細菌バランスはあっという間に崩壊してしまいます。
その結果、善玉菌が減少し、悪玉菌が異常繁殖する「細菌性膣炎(Bacterial Vaginosis, BV)」や、カンジダ菌が増殖する「膣カンジダ症」を引き起こすリスクが急増します。
これらは、不快なかゆみや、魚が腐ったような強い臭いのおりものの原因となり、多くの女性を悩ませる疾患です。
リスク3:実はすぐ乾く…潤滑剤として効果が低く、逆に肌を傷つける
「唾液は潤いがある」というのは、大きな誤解です。
唾液は水分が主成分のため、非常に蒸発しやすく、すぐに乾いてしまいます。
市販の潤滑剤(ローション)が持つような、滑らかさや持続的な保湿効果は全く期待できません。
乾いた状態で摩擦が続けば、膣やその周辺のデリケートな皮膚に、目に見えないほどの微細な傷が無数につきます。
この傷は、痛みや不快感の原因になるだけでなく、様々な細菌やウイルスが体内に侵入するための「入り口」となってしまい、さらなる感染症のリスクを高めるという悪循環を生み出すのです。
【論文①】女性は必読!オーラルセックスが引き起こす「細菌性膣炎(BV)」の恐怖
唾液のリスクの中でも、特に多くの女性に関係するのが「細菌性膣炎(BV)」です。
学術誌『PLoS Biology』に掲載された2021年の論文「Oral sex linked to vaginal condition bacterial vaginosis」は、この問題に鋭く切り込んでいます。
「細菌性膣炎(BV)」とは?多くの女性が悩む膣のトラブル
まず、BVについて簡単におさらいしましょう。
BVは性感染症ではなく、先ほども触れたように「膣内の細菌バランスが崩れる」ことで起こる状態です。
健康な膣内は善玉菌であるラクトバチルス菌が優勢ですが、これが減り、様々な種類の悪玉菌が増殖してしまうのです。
主な症状は、魚のような生臭い臭いを伴う、灰色がかったおりものです。
かゆみや痛みはないことも多く、自覚がないまま進行しているケースも少なくありません。
性交渉の経験がある女性なら、誰でもかかる可能性のある、非常に一般的な疾患です。
論文が解き明かした「口の中の菌」と「BV」の恐ろしい関係
カリフォルニア大学の研究チームが行ったこの研究は、衝撃的な事実を明らかにしました。
それは、歯周病や歯垢の原因菌として知られる口腔内細菌「フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)」が、BVの発症に深く関わっているというものです。
研究によると、この菌は、唾液を介してオーラルセックスなどによって膣内に侵入すると、BVの原因となる他の悪玉菌の増殖を助ける「手引き役」のような働きをすることが分かりました。
つまり、口の中の衛生状態が悪いパートナーとのオーラルセックスや、唾液を潤滑剤として使用する行為は、BVの発症リスクを直接的に高める可能性があるのです。
風俗サービスの利用者や、性的パートナーが多い方は、様々な細菌に接触する機会が増えるため、特に注意が必要と言えるでしょう。
BVを放置すると、さらに深刻な病気のリスクが高まる
BV自体は、直接的に命に関わるような重篤な病気ではありません。
しかし、決して軽視してはいけません。
膣内の防御機能が低下した状態であるため、クラミジア、淋病、HIVといった性感染症や、尿路感染症にかかるリスクが格段に高まります。
また、妊娠中の女性がBVにかかると、早産や低出生体重児のリスクが上昇することも知られています。
「臭いが気になる」「おりものがいつもと違う」と感じたら、放置せずに婦人科や性感染症内科を受診することが極めて重要です。
【論文②】男性も無関係ではない!唾液とクラミジア感染の関連性
では、男性、特に男性同士の性行為(MSM)の場合はどうでしょうか?
2021年に発表された論文「Role of saliva use during masturbation in the transmission of Chlamydia trachomatis in men who have sex with men」が、この点について興味深いデータを示しています。
男性同士のセックス(MSM)における唾液のリスクとは?
この研究は、MSMにおけるクラミジア感染と、マスターベーション時の唾液使用との関連を調査したものです。
クラミジアはMSMの間で最も一般的な性感染症の一つであり、主にコンドームを使用しないアナルセックスやオーラルセックスで感染します。
研究が示す「限定的なリスク」と「本当に注意すべきこと」
研究の結論として、唾液を使ったマスターベーション(ソロ、相互問わず)がクラミジア感染全体に占める割合は、3.9%~6.2%と比較的小さいことが示されました。
これは、あくまでアナルセックスやオーラルセックスといった他の行為に比べてリスクが低い、ということを意味します。
唾液を介した感染リスクがゼロではない以上、安全とは言えません。
この研究が本当に示唆しているのは、クラミジア感染の主要なリスクは、依然としてコンドームなしの性交にあるという事実です。
唾液のような「小さなリスク」に目を向けることも大切ですが、それ以上に「大きなリスク」である基本的な予防策(コンドームの正しい使用)を徹底することの重要性を、改めて浮き彫りにしています。
【実践編】もう迷わない!あなたに合った「安全な潤滑剤」の選び方
ここまで唾液のリスクを解説してきましたが、では一体何を使えば安全で快適なセックスが楽しめるのでしょうか?答えはシンプルです。
市販されている、性交用の潤滑剤(ローション・ゼリー)を使いましょう。
ここでは、代表的な種類とその特徴をご紹介します。
基本はコレ!「水性潤滑剤(ウォーターベース)」
最も一般的で、初心者にもおすすめなのが水性の潤滑剤です。
- メリット:
- 自然な使用感で、ベタつきが少ない。
- 水で簡単に洗い流せる。
- ラテックス製、ポリウレタン製のコンドームと併用可能。
- シリコン製のおもちゃにも使える。
- デメリット:
- 比較的乾きやすい(唾液よりは遥かに長持ちします)。
ドラッグストアなどで最も手に入りやすく、種類も豊富です。迷ったらまず水性を選べば間違いありません。
長持ち&肌に優しい「シリコンベース潤滑剤」
より長時間のプレイや、肌が敏感な方におすすめです。
- メリット:
- 非常に滑りが良く、潤滑効果が長時間持続する。
- 撥水性があり、水中やシャワーでの使用にも向いている。
- 低刺激で、アレルギー反応を起こしにくい。
- ラテックス製、ポリウレタン製のコンドームと併用可能。
- デメリット:
- 水で洗い流せず、石鹸などが必要。
- シリコン製のおもちゃを劣化させる可能性があるため、併用はNG。
【注意】ココナッツオイルはコンドームとの相性が最悪
「ナチュラルなものがいい」という理由で、ココナッツオイルやオリーブオイルなどを使う方がいますが、注意が必要です。これらのオイルは、ラテックス製のコンドームを劣化させ、破損させる危険性が非常に高いです。
避妊や性感染症予防のためにコンドームを使用する場合は、オイル系の潤滑剤は絶対に避けてください。必ず「水性」または「シリコンベース」の製品を選びましょう。
まとめ:正しい知識が、あなたとパートナーを守る「最高のお守り」になる
今回は、複数の科学論文を基に、「唾液を潤滑剤として使うことのリスク」を徹底的に解説しました。
- 唾液は性感染症や細菌性膣炎のリスクを高める。
- 潤滑剤としての効果も低く、逆に肌を傷つける可能性がある。
- 安全で快適なセックスのためには、市販の水性・シリコンベースの潤滑剤を使うべき。
風俗サービスを受ける側も、提供する側も、そしてプライベートなパートナー同士でも、この知識は非常に重要です。
せっかくの楽しい時間が、後から後悔するような辛い経験に変わってしまっては、あまりにも悲しいですよね。
ほんの少しの手間を惜しまずに、正しい潤滑剤を用意すること。
もし相手が唾液を使おうとしたら、「ローション、使ってもらえますか?」と勇気を出して伝えること。
正しい知識は、あなた自身と、あなたの大切な人を守るための「最高のお守り」になります。
この記事が、あなたのより安全で健康的なセクシャルライフの一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
出典リスト:
- Kennedy, C. E., et al. (2021). “3 Reasons Not To Use Saliva As Lubricant”.
- “Oral sex linked to vaginal condition bacterial vaginosis”. (2021). PLoS Biology.
- Visser, M., et al. (2021). “Role of saliva use during masturbation in the transmission of Chlamydia trachomatis in men who have sex with men”. Sexually Transmitted Infections.
- “About STI Risk and Oral Sex” – Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
- “Bacterial Vaginosis (BV)” – National Health Service (NHS), UK



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